三軒茶屋を歩いていると、「いつの間に閉まったのか」と気づく店があります。長年の常連が多い個人店が突然閉まるケースも少なくありません。
前回の記事では、世田谷区の事業所統計を確認しました。今回は「なぜ店が閉まるのか」という理由の側面を、全国データと地域の状況を合わせて掘り下げます。
まず全国的な状況——飲食店の倒産は過去最多ペース
三軒茶屋固有の問題を見る前に、全国的な背景を押さえておく必要があります。
2023年の飲食店倒産件数は768件で、コロナ禍直後の2020年に迫る水準となり、2022年比で約7割増という結果でした。主な原因は、食材・光熱費などの物価高騰と、慢性的な人手不足です。コロナ禍でゼロゼロ融資などの支援を受けて持ちこたえた店舗が、支援終了後に経営の実力を問われる局面に入ったことも背景にあります。
三軒茶屋の閉店も、この全国的な流れと無縁ではありません。
三軒茶屋・世田谷に特有の3つの構造的要因
① 家賃水準の高さ
三軒茶屋は渋谷から田園都市線で2駅という立地にあり、住宅・商業ともに賃料水準は高めです。三軒茶屋2丁目の住宅地の公示地価は2025年時点で144万円/m²で、世田谷区内の住宅地として最高水準です。
飲食店経営において家賃は固定費の中で最も重い項目の一つです。売上に対する家賃の比率(家賃比率)が高いほど、利益が出にくくなります。三軒茶屋の商業地としての人気が高い一方で、その家賃水準が個人店の経営を圧迫しやすい構造があります。
② 人手不足と高齢化
飲食業界全体で人手不足が深刻化しており、三軒茶屋も例外ではありません。スタッフが確保できず、オーナー一人で回している店が増えています。
また、長年営業してきた個人店のオーナーが高齢になり、後継者がいないまま閉店するケースも目立ちます。全国データでは飲食店経営者の60%以上が60歳以上であり、後継者がいると答えた個人経営者は37%にとどまります。利益が出ていても高齢と体力的な問題から閉店せざるを得ないケースは、三軒茶屋でも起きています。茶沢通りの長年続いた衣料品店の閉店などはその一例です。
③ 建物の老朽化と再開発の波
三軒茶屋の繁華街には、道幅が狭く老朽化した低層建物が多く残っています。こうした建物は建て替えや再開発の対象になりやすく、賃借している店舗は立ち退きを求められることがあります。
長年の固定客を持つ店が、自らの経営判断ではなく物件側の事情で閉店するケースは、再開発が進む都市部では珍しくありません。三軒茶屋でも今後、駅周辺の再整備が進むにつれ、こうした退出が増える可能性があります。
閉店の理由は一つではなく、複合的に重なる
実際の閉店は、一つの原因だけで起きることはほとんどありません。物価高騰で利益率が下がっているところに、スタッフが辞めて人手が足りなくなり、そこへオーナーの体調問題も重なる——こうした複数の要因が重なったとき、閉店という判断が下されます。
「あの店なぜ閉まったんだろう」という疑問の答えは、たいてい単純ではなく、複数の問題が積み重なった結果です。
バックオフィスの視点から見えること
閉店していく店舗の多くに共通するのは、「現場は回っているが、経営の管理が追いついていない」という状態です。売上はあるのにキャッシュが手元に残らない、スタッフが辞めても補充が間に合わない、毎月の収支が把握できていない——こうした状況が蓄積すると、外部からの衝撃(物価高騰・人手不足・家賃交渉)に対応できなくなります。
店を続けるためには、商品・接客の質だけでなく、請求・支払・人員管理といったバックオフィスの仕組みが安定していることが必要条件になります。
まとめ
三軒茶屋・世田谷で店が閉まり続ける背景には、全国共通の物価高騰・人手不足に加え、高い家賃水準・経営者の高齢化・建物老朽化という地域特有の構造的要因が重なっています。
閉店は単一の原因ではなく複合的な問題の結果であり、外部環境の変化に耐えられる経営の土台づくりが、長く続く店と閉まる店の分かれ目になっています。
※本記事のデータは帝国データバンク・中小企業庁・経済センサス(総務省・経済産業省)・Wikipediaの公示地価情報などをもとにしています。
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